肥満の人はコロナで重症化しやすい可能性が高い

 新型コロナ肺炎(covid-19)の原因はSARS-CoV-2というウイルスです。ウイルスはヒトや動物の細胞を乗っ取ることによって自分たちが増殖できます。ウイルスだけでは何も起こりません。ウイルスがヒトの細胞を乗っ取るためには細胞の中に入る必要があります。レセプターという細胞膜表面にあるたんぱく質がウイルスと結合することによってウイルスは細胞内に侵入できるようになります。covid-19はヒトのACE2というたんぱく質に結合して細胞に入ります。ACE2はどこにあるかといえば、血管や心臓の最も内側にある内皮細胞や脂肪細胞に多いと報告されています。下記の文献によれば肥満の人は心臓の周りにくっついている脂肪細胞が多く、ACE2もここに多いということです。実際に、重症化する患者のBMI分布では26以上で比較的多いことや、武漢で亡くなった患者さんの心臓には強い炎症が起こっていたことを考えますと、どうも本当らしいと思えてきます。ちなみにcovid-19はcoronavirus diseaseの略で疾患名、SARS-CoV-2はsevere acute respiratory syndrome coronavirusの略でウイルス名です。

 

<参考文献>

  • PMID: 27617176

< 参考文献へのアクセスの方法>

PMIDから始まる文字列をGoogleなどの検索エンジンにコピーペーストしてください。検索結果の一番目にでてくるはずです。邦文で読むためには、抄録をコピーしてGoogle 翻訳で日本語に変換してください。

検査に対する幻想を抱くのはやめよう

皆さんは病院の検査は自覚症状や他覚症状よりも診断を付けるうえではるかに正確で信頼できると思っている人が多いと思います。残念ながらそのイメージは誤りです。

 

まず症状があると、お医者さんは診断名の候補を可能性の高い順にいくつか頭にうかべます。この候補の中から一つに絞り込んでゆく過程で検査が威力を発揮します。検査をすることによって診断が正しい確率を上げるためにとても重要です。「確率を上げる」という点が重要で、決して100%ではありません。

 

現実には存在しませんが、理想的な検査は次の通りです。

今仮に200人の集団を考えます。この病気は日本全体の人口のうち20%の人がにかかることがすでに分かっているとします(有病率が20%ということになります)。お医者さんがこの病気の診断名の正確さを確かめるために検査をしたとします。この検査は病気の人が陽性に出る割合が100%とします。つまりこの病気の人がこの検査をすれば必ず陽性になるということです。

つぎに、この検査は病気のない人はすべて陰性に出るとします。全体として、この検査結果を表にすると以下のようになります。しかし、残念ながらこのような完璧な検査は存在しないのです

  疾患  
あり なし  
検査 陽性 20 0 20
陰性 0 180 180
    20 180 200


現実に存在する検査でかなり優秀な検査を実施した場合、結果は次のようになるでしょう。

 

  疾患  
あり なし  
検査 陽性 18 2 20
陰性 2 178 180
    20 180 200

病気であって陽性に出る割合(感度といいます)が18/20=90%, 病気がない人では陰性と出る割合(特異度といいます)が178/180=98.8%となります。つまり、この検査は感度90%,特異度98.8%ということになり、かなり優秀な検査です。

 

さて、新型コロナ肺炎の場合はどうでしょうか。PCR検査の能力の正確な値は不明ですが、ネットや文献の値を基に、感度は60%、特異度は99%と仮定しましょう。有病率が不明ですが、100年前のスペイン風邪では日本人の約37%が感染しましたので、covid-19でも40%としましょう。症状の有無に関係なく日本人のすべてにこの検査を実施したとします。結果は次のようになるでしょう。

 

  疾患  
あり なし  
検査 陽性 48 1 49
陰性 32 119 151
    80 120 200

注目していただきたいのは検査陽性者49名のうちで1名は病気ではない、つまり偽陽性です。検査対象者200名のうちで0.5%が偽陽性になります。これを日本の人口全体に当てはめると、偽陽性者数は63万人となります。日本の感染症ベッド数の総数は1,800でしかありません。偽陽性者がすべて自宅待機であれば問題ありませんが、当然医療機関を訪れるでしょう。医療機関の負荷がそれだけ増え、本来救えるはずの陽性者が重症化することもふえるでしょう。

検査は必要な人だけにすべきであって、現状では一般の人のスクリーニングには適さないといえます。

東京オリンピックは来年夏に本当に開けるのか?新型コロナの第2波の対策が必須

新型コロナの流行はおよそ100年前に世界中で流行したスペイン風邪と比較されることが多いです。スペイン風邪の日本の状況は下の表に示すように最初の流行から1年後、2年後に、規模は十分の一ずつになっていますが再流行が起こっていることがわかります。

東京オリンピックは1年先送りになりましたが、また同じような状況になってしまう可能性に注意する必要があると思います。来年にオリンピックの再延長はないと思いますので今年中に流行を阻止しない限り厳しい状況になってしまいます。

希望が持てる事実としてはスペイン風邪のときはウイルスという概念自身がなく、ましてやワクチンはありませんでした。今回は違います。100年間の医学医療の進歩が試されるということです。

 

 

新型コロナの再流行

東京都健康安全研究センター年報56巻を基にダイヤモンド編集部作成資料

 

【マスクは感染拡大予防に有効だった】

ウイルスや細菌は小さいから、マスクの目を通過するので無意味である、という説があります。

しかし、ほとんどのウイルスは細菌はその周りに水分子を引き連れて存在しています。眼鏡やガラスの曇りを取るときに、息を吹きかけると曇ります。これはヒトの呼気中には水分が含まれているからです。水分を結合した状態では、全体の大きさは大きくなり、全部ではないにしても、病原体がマスクの目に引っかかります。ウイルスや細菌が「裸」で空気中に存在することが知られているのは、結核菌、麻疹(はしか)ウイルス、水痘(みずぼうそう)ウイルスだけで、空気感染します。この三種類はマスクを通ってしまいます。かろうじて細菌の結核菌を遮断するN95があるくらいです。これまでの状況からCovid-19は水分子を結合していると考えてよいと思います。咳やくしゃみをしたときにはさらに大きな水滴中に存在することになりマスクの効果が大きくなります。この感染経路を飛沫感染と呼んでいます。しかし、空気感染と飛沫感染の明確な区別は明らかではないと思います。covid-19は空気感染があるのかないのは明確になっていないと思います。また、エアロゾルという用語もあいまいな概念と思います。

 

他人や周りにとってのマスクの利点は、通常の呼吸中のウイルスが周りに放出される量を減らすこと、また、咳やくしゃみによる拡散には特に効果があることです。自分にとっての利点は、特に近く(1.5m以内)で他人と会話をするときは目には見えない小さな唾のしぶきが相手の口から大量に出ていますから、これらをもろに浴びないようにすることです。せっかくマスクをしていても、会議などでマスクを外して発言することは危険な行為です。

 

臨床試験でも効果はあることが示されています。効果がなかったという研究もありますが、被検者がきちんとマスク着用の指示を守っていなかった可能性があると著者自ら指摘している論文もあります。

 

感染拡大にマスクで十分というわけではなく、徹底した手洗いの合わせ技で効果が発揮されるということです。

参考になる文献

  • PMID: 19797474
  • PMID: 21103330
  • PMID: 20088690

 

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